さうす・りばてぃー
 それは三人で食べるには、大きすぎるケーキだった。

「余るかな?」

「余りませんよ。私がいますから」

 にこり、と笑う見由。この子は本当に甘いものが好きなんだな。

 太らないのが不思議なくらいだ。この小さな体のどこに、栄養分は吸収されるんだろう。

 甘いのと辛いのでちょうど中和されてるんだろうか、などとありえないことを考えてみる。
 
 ケーキの上にろうそくを立て、火をつける。

「よし穂波、電気消してくれ」

「りょうかーい」

 穂波は立ちあがり、電気のスイッチを消す。

 同時に、俺はクリスマスツリーのスイッチを入れた。

 部屋が暗くなり、明かりが、クリスマスツリーの最上段にともる光と、ろうそくの光だけになった。

「よし、歌うか」

「曲は何にする? きよしこの夜?」
 穂波が聞いてくる。

「いや、『we wish you a merry christmas』にしよう」
 
 きよしこの夜の歌詞は知らない。

「we wish〜」もうろ覚えだが、先週音楽の授業でやったので、多少は歌える。
 
 そして、いざ歌おうとして、すーっと息を吸ったとき、突然チャイムが鳴った。

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