さうす・りばてぃー
 暗闇の中、ろうそくの光に照らされて浮かび上がる四人の顔。

 それは幻想的で、一年間の辛かったことや悲しかったことが、どんどん消えてゆくようだった。

「星空、ろうそく消せ!」
 俺が声をかける。

「えっ、あたしが消しちゃっていいの?」

「一息な」

 星空はうなずくと、ケーキの上のろうそくに向けて息を吹きかけた。

 風に吹かれたように火がゆれ、すべて消える。

「メリークリスマース!」

 誰かが叫んだ。他の三人が、それに続く。

「メリークリスマス!」

「クリスマース!」

 なぜか起こる拍手。そして、電気が再びつけられる。

 見由が嬉しそうに、ケーキにナイフを入れた。

 ケーキはきれいに六等分され、そのうちの四つがそれぞれの取り皿に分けられる。

「あーっ、私のより、ゆうくんの方のが大きい!」

 子供みたいなことを言う穂波。

「早い者勝ちだ」

 生クリームを口につけながら、ケーキを味わう俺。

「私はイチゴがあれば満足です」

 イチゴに加え、ちゃっかりチョコレートまで取っている見由。

「やっぱり、クリスマスといえばケーキよね」

 口いっぱいにケーキをほおばる星空。

 まだ16歳の俺だけど、それは今までの人生の中で、一番楽しいクリスマスだったんじゃないかと思う。

 こいつらといると、毎日お祭りをしているようだ。ちっとも寂しくない。

 いつまでも、こんな日々が続くといい。

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