さうす・りばてぃー
 それから十分後。星空がダウンする。

 ソファーにもたれかかりながら、寝息を立てる星空。

 しかしもう一人は、まだ飲み続けていた。

 シャンパンを三本空にして、さらに冷蔵庫からサワーの缶を取り出してくる。

 もともと酒に強いだけに、こうなると手がつけられない。

「ちょっと俺、ジュース買ってくる」

 いち早く逃げ出す達也。俺もそれに続いて部屋から出ようとしたが、一歩遅かった。

「お兄ちゃん!」

 見由は睨むような目で、俺を見た。その顔は、完全に真っ赤になっている。

「全然、飲んでないじゃないですか!」

 どん、とサワーの缶をテーブルに叩きつける。

「はい、すいません」

 どうも逆らわないほうがよさそうだ。俺は見由に近寄り、差し出されるサワーの缶に、言われるままに口をつけた。

「えい」

 見由は声とともに手を伸ばし、俺の持っているサワーの缶を、急角度にした。

 缶の中身が、一気に俺の口に注がれる。俺は危うく、気管に液体を入れるところだった。

「きゃははははははは」

 咳き込む俺を指差して、見由が笑う。目が完全に座っていた。

 これがあのおとなしい見由だとは思えない。

「た、タチが悪い……」

 もはや場は、完全に見由の独壇場になっていた。


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