さうす・りばてぃー
「メリークリスマス」

 そう言って、俺に花束を渡す男。それは、知だった。

 黒のコート姿で、もちろん私服である。

「あれ? おまえ、よそに行くんじゃなかったのか?」

「終わったから、こっちに顔出してみようと思ってさ。もう終わってたか?」

「いや、まだ。まあ上がれよ」

 知は俺の招きに従い、部屋に入った。時刻はもう十二時近い。

「あっ、岩田君」

「よお、品川さん」

 二人が声を交わす。

 そのときの穂波は、もういつもの穂波だった。軽く微笑んでいる。

 穂波は俺の手から花束をとると、花瓶を取ってきて、勝手にそこに生けた。

「この花束って、誰かに持ってきたのか?」

「いや別に。せっかくのパーティーだし、花があったほうが華やかかなって思ってさ」

 コートを脱ぎながら言う知。嫌味はないが、やることがいちいちキザだ。

 そして、それからすぐ、達也が帰ってきた。

 俺を見捨てて逃げたその男に、俺は思い切り冷たい視線を送った。

 しかし、達也はあっさりとそれを無視した。

「おお、岩田も来てたのか。よし、飲みなおそうぜ」

「ああ」

 コンビニ袋を掲げる達也。その中には、たくさんのお酒とジュースが入っていた。

 金を俺たちに請求しないのは、やつなりの罪滅ぼしということだろう。仕方ないので許してやることにした。

 そして全員の手に、再び酒が回る。

 久しぶりに、六人が同じ部屋に揃った。

 二人寝ているとはいえ、イベントでこうして揃うのは夏の旅行以来か。

 そんなに久しぶりという感じは全然しないのだが。

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