さうす・りばてぃー
 確かに、イブの日にデートをキャンセルしたら、相手はどう考えてもフラれたと思って傷つく。

 最終的には断るにせよ、きちんと自分の口から伝えなくてはいけない――――達也はそう考えたのだろう。

 さらに、その相手からクリスマスパーティーに誘われた以上、「ごめんなさい風邪でした」というわけにもいかない。だから、俺たちの前でも無理していたのだろう。

 俺でも、たぶん達也の立場なら、同じことをしていたと思う。

 俺はふと、あることに興味を持った。それを知に聞く。

「なあ、おまえが達也の立場だったら、どうしてた? 風邪でも行ったか?」

「いや。俺だったら、そもそも好きでもない女とイブの日にデートの約束はしない」

 即答されてしまった。確かに、知ならそうするだろう。しかも、それは互いに傷つかなくてすむやり方だ。

「じゃあ、好きな女だったら?」

「風邪引いたと言って、見舞いに来てもらう」

 俺はその言葉に、納得してしまった。確かにそれなら相手も自分も無理しなくてすむ。

 おそらくそれが一番正しい道だろうと思う。だけど――――

「祐介はどうなんだ?」

「俺は、達也と同じ行動とってるよ、たぶん。二人とも単純だからな」

 知の質問に、俺は素直にそう答えた。

 仮に知のやり方を知っていたとしても、俺や達也は、今日の達也と同じ行動をとっただろう。

 なんとなく、そんな気がする。俺も達也も、不器用だから。
 
 穂波は、コーヒーを飲みながら、黙ってそれを聞いていた。

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