さうす・りばてぃー
「わっ、セクハラだ」

 達也が嬉しそうに声をあげた。何もしてないっつーの。

「あー……祐介、どこ触ってるのよー」

 無邪気に笑いながら言う星空。俺の手は両手とも肩より高い位置にあるし、こいつに触れているのは、彼女の頭に触れた俺の胸だけのはずだが。

「おお、ついに!」

「お兄ちゃん、セクハラはだめですよー」

 口々に言ってくる達也と見由。こいつらも少し酔っ払っているらしい。

「何もしてないっての。ほれ、座れ」

 星空の腕をとり、座らせようとした。すると、星空は抵抗するように、体を動かす。

 その瞬間、俺はバランスを崩し、その場にうつぶせに倒れた。

 ちょうど、星空の下敷きになるような感じだ。

「こーら……逃げないの」

 星空は俺を捕まえて言う。俺の背中に、彼女の胸の感触がある気がするのは、気のせいだろうか。

 気のせいにしておこう。とりあえず、ここから脱出しなければ。

「達也さん、今です! 早く早く」

 見由は自分の持っているデジカメを、俺たちに向けた。

 達也はすかさず俺たちのすぐ前に来て、地面にうつぶせになる。

 カシャ、と音がして、デジカメが光る。

 達也はカメラに向かいピースして、星空は完全に目をつぶり、俺はその下でもがき苦しんでいるという、どうしようもない写真だ。

 見由は特ダネをカメラに収めることに成功した記者のように、会心の笑顔を俺たちに向けた。

 俺がようやく星空の下から脱出すると、彼女はすでに眠りについていた。

「やれやれ」

 星空と知は、気持ちよさそうにぐっすりと眠っている。起きているのは見由と達也と俺の三人になった。

 それにしても意外なのは、見由が思ったより酒に強いことだ。

 彼女も飲んでいないわけではない。すでに3缶を空けている。

 そのわりには、ほとんど酔った様子が見られない。子供っぽい(主に外見が)から、真っ先につぶれるものだとばかり思っていたが。
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