さうす・りばてぃー
 ここの街並みは、割と新しかった。新興住宅地といった感じだ。

 決して都会という雰囲気ではないけれど、デパートやレストランなど、生活に必要なものは駅前に一通りそろっていた。

 さらに、大きなショッピングセンターがあり、そこには食料品や日用雑貨などがたくさん置いてある。

 自宅から駅前までは、歩いて10分。まずまずの距離だ。高校に行くにも買い物に行くにも、まずは駅が基点になるだろう。

 俺は今日6度目の買出しを行うべく、ショッピングセンターに向かっていた。家と家の間の狭い道をすり抜け、大通りに出る。

 ここまでくれば、駅はもう目と鼻の先だ。通りの両脇には、いちょうの街路樹が植えられている。秋には、きれいな黄色になることだろう。

「困ります」

 ふと、声が聞こえた。女の子の声だ。だいぶ先のほうで、一人の小さな女の子が、二人の男に囲まれている。

 女の子は、中学生――――いや、小学校高学年といったところか。白いパーカーに、デニムのスカートをはいている。男のほうも、学年的にはたぶん彼女と同じか、少し上くらいだ。まだ顔から幼さが抜けきっていない。

「そんなこと言わずに。金は俺たちが出すからさ」

 どうもナンパらしい。男二人がかわるがわる声をかけているが、女の子は困った顔をしている。意識的に、歩く速度を緩め、そちらを伺ってみる。

「カラオケが嫌なら、お腹すいてない?一緒に何か食べようよ」

「えと、困るんです、ほんとに……」

 女の子は困惑している様子だ。どうも断り方に慣れていないらしい。困ってるなら、無視して通り過ぎればいいと思うのだが。
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