さうす・りばてぃー
 俺は早速、聞き取り調査を開始した。

 まず最初に、穂波に聞いてみた。

「さうす・りばてぃーのみんなで、夏休みに遊びに行こうって話があるんだが、穂波も行かないか?」

「うん、いいよ。どこに行くの?」

 掃除中だったので、穂波は黒板消しを手に答えてくる。

 なお、なんで俺が掃除時間中に、よそのクラスにいるのかについては、詮索しないように。

「海か山ってとこかな。どっちがいい?」

「私はどっちでもいいよ。みんなが行きたいほうでいいから」

 予想通りの答えが返ってきた。

 穂波が強く自己主張するシーンというのも、これまた想像できない。
 
 続いて、掃除時間が終わってから、教室内で星空に聞く。

「星空、みんなで山と海のどっちかに行こうって話があるんだが、行かないか?」

 いまさら、みんなというのが誰かを説明する必要はないだろう。

「うん、行く行くー」

 笑顔で二つ返事の星空。

 今日の星空はどうやらご機嫌のようだ。

「星空は海と山のどっちがいい?」

 星空はちょっと考えて、そして言った。

「私は山かな」
 これも予想通り。

「水着姿に自信がないんだろ?」

 軽く言った俺の頭を、星空の持っていた教科書が直撃した。

 しかも角。

 ごち、と音がして、目の前に火花が散る。

「いてっ!」
 俺は思わず悲鳴を上げた。

「どっから、そういうデリカシーのないセリフがでてくるのよ」

 さっきの笑顔はあっという間に霧散し、星空は口を尖らせた。

「このきれいな口から」

「もう一度殴ってあげようか?」

 星空は教科書を左手でとんとんと叩く。

「いえすいません姫様」

 俺は素直に詫びを入れた。
< 78 / 194 >

この作品をシェア

pagetop