さうす・りばてぃー
 そして、部活(といっても、ただ部室でだべってるだけだが)が終わり、家路に着く。

 夕食を食べたあとで、俺は達也の部屋に行った。

「まあ入れよ」

 扉を開けて迎え入れる達也。

 そこは、相変わらず何もない部屋だった。

 茶もコーヒーも出てこないので、俺は自分専用のアイスコーヒーを持参していた。

 達也が物欲しげな目でそれを見ていたが、無視する。

 やつには自立を期待したいところだ。
 
 その後、旅行先をどこにするかで、俺と達也の間で激論が交わされた。

 本格的な登山を主張する達也に対し、避暑をターゲットに置く俺。

 結局、候補は三つに絞られた。

 この三つを参加者に見せて決を採るということで、意見は固まった。

「ところで、知ってるか祐介。うちのクラスでは、穂波ちゃんって結構人気高いんだぞ」

 一段落つき、俺のアイスコーヒーも空になった頃、達也が言った。

「ああ、だろうな」

 俺はそっけなく言う。

 実際、穂波はわりときれいだ。

 顔立ちは整ってるし、スタイルもバランスが取れている。

 気立てもいいし、人気にならないほうがおかしい。

「いいのか、祐介」

 からかうような目で、達也は俺を見る。

「何が?」

「捕まえとかなくてもさ」

「別に、いまさら」

 俺は軽くかわすことにする。

 そういえば、達也は例の秘密を知っている、数少ない人間だ。

 たぶん、この高校内では、俺と穂波を除けば唯一といっていいと思う。

 だが、本気で「いまさら」だった。

「まあ、おまえが決めることだから、俺は何も言わんけどさ」

「だったら、はじめから言わないでくれ」

 ちょっとぶっきらぼうになる俺。

 いまだにその話が出ると、俺は不機嫌になってしまう。

 大人げないとわかってはいるが、自分でも抑えられない。


< 80 / 194 >

この作品をシェア

pagetop