さうす・りばてぃー
 自慢じゃないが、希望が丘学園はそんなに頭のいい奴らの集まりとは言いがたい。

 学園平均は全国の高校生の平均よりちょっと下程度で、卒業後の進路も、進学率よりも就職率のほうが高い。

「ま、話半分に聞いておくことだな。『〜以来の』という形容詞も、ずいぶんデフレ起こしてるようだし」

「まあ、それはそうかもな」

「それよりおまえ、ちゃんと宿題やったか?」と、俺は達也に聞く。

「愚問だな」
 達也は鼻で笑った。

「やってないんだな」
 俺はあっさりと決め付けた。あきれて、ため息を一つつく。

「入学前に宿題を出すなど、許せんことだ。俺の自由は、誰にも侵害させん」

 達也は自信満々に言った。

「それに……」
 達也はそう言ってから、俺のほうを見る。俺はその続きを読み、先手を打つ。

「写させてやらんぞ」
 俺はきっぱりと言った。

「そんな殺生な」

 とたんに頭を低くし、頼み込む達也。俺は奴のためにもならないので、頑としてそれを断った。

「友達だろ?」

「そういう友情ごっこは本人のためにならん」

 俺は奴のためを思い、あえて冷たく突き放す。

 ――――しかし、最終的には、俺も奴の必死に哀願する姿勢に心を打たれ、写させてやることになった。なんて優しい俺。

 ちなみに、その日と次の日の晩飯は、達也がおごってくれることになった。はじめ奴は一食分を主張したが、俺の粘り強い交渉の結果、二食になった。
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