君に許しのキスを
前にも彼女は、俺のことを好きだと言った。

いや、正確に言えば、その時は俺が『好きか』と尋ねて、ただそれに『はい』と答えただけだ。

これほどに明確に、彼女が『すき』だなんて言ってきたのは、初めてだのことだ。



とは言えこれまでに告白、という類のものをされたことがないわけではない。
例えば、いつぞやの山田花子さん(仮名)だって、生徒でありながら、教師の俺にそれを言った一人だ。
おかしいのは、今回のそれを聞いた、俺自身だ。



何故、これほどまでに胸が温かくなるのだろう。

彼女を強く抱きしめる度に浮かぶ、この『彼女を守らなければ』という思いは、何だ。

どうして俺は、堅く守ってきた『無難』を捨ててでも、この子には優しくしたいと思うのだろう。
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