君に許しのキスを

―side洋平

この世の終わりのような、絹を裂くような、悲鳴だった。
俺と周は何が起きたのか、訳がわからないアホな顔をしていただろう。

彼女を引き寄せていた手も、力が全く抜けてしまった。


『村西』さんは茫然自失、といった様子で、さらに取り乱しかねない、という様子でもあった。



俺はひとまず、耳を塞ぐ少女の手をとり、ベッドから連れ出した。


『村西』さんと『凜』を今は同じ場所に置いておくべきではない、というのがその時俺が出した、精一杯で、最善の判断だった。


目を固く瞑り、耳を強い力で塞ぎ続ける彼女の手を引き、とりあえず玄関を出る。
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