君に許しのキスを
彼女の言葉の意味がわからなった。



記憶がない?
どういう意味だ?
記憶喪失ってやつか?
単純に忘れてるとかじゃなく?


考えながら、何も言えずに彼女を見つめていると、彼女は唇をぎゅっと噛んでいた。



泣きそうなのを堪えているのだろうか。


もう癖になってしまったように、頭に手を置こうとした。



「触らないで。」


静かで強い、拒絶の言葉だった。



それでも、彼女は涙を噛み殺しながら、何かにすがりたがっているように俺には見えた。

だから、そっと腕を差し出してみた。
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