君に許しのキスを
「ふぅん…。」


せっかく初めて俺の方をしっかりと見ていたのに、その一言で、興味なさそうに顔をそらした。


それから少しの間、俺も彼女も沈黙した。

多分、きちんと成立した会話を終え、話題も失ったせいだろう。

突然、彼女が歩きだしたと思うと、近くのガードレールに腰掛けた。
もう逃げる気はないらしい。
俺はその、人1.5人分くらいあけた隣に腰をおろした。



遠くを見ながら、彼女は言った。

「妃奈ちゃんも、強くなろうと、してるのかな…。」

ぼんやりと、誰に問い掛けるでもないような言い方だった。



俺は、彼女が見ていないことを知りながら、小さく頷いた。
< 151 / 301 >

この作品をシェア

pagetop