君に許しのキスを
彼女は、俺よりもずっと強かった。


俺が守ってやろうなんて、おこがましいほどに。


対して俺はいつも、逃れようとしていた。

あの日からずっと、逃げ続けてきた。

裏切って、逃げて。

一体、何を得たのだろう。
何を守ってきたのだろう。



俺は、とても弱い人間なんだ。
だからこそ、彼女に惹かれたのだろう。
彼女の強さに。



俺は手にしていた書類を置き、ゆっくりと席を立った。
< 156 / 301 >

この作品をシェア

pagetop