君に許しのキスを
構わず俺は続ける。


「あのさ、大事な人のことは、理解できないところも全部、受け入れて、信じてこそ、
大事だって言えるんじゃないかな。
恋人にしても、
友達にしても。」



「ほんとに説教くさいですね。
そんな理想論。」


彼女は言った。
顔をくしゃっとさせ、笑いながら。



この子の笑顔を見るのは、
初めてだ。

なんて無邪気に笑うんだろう。


この子がいつも、こんなふうに笑っていられたら良いのに。


あんな辛い顔ではなく。


あんな辛い顔をさせるんじゃなく、
俺が、この笑顔を守ってやりたい。
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