君に許しのキスを
「やだよー、土屋。嫌い。
何か、キモい。
あれだったら、鬼婆のがマシ。」


放課後、あたしが一人暮らしをする部屋に凜を呼んだ。

凜は受け持ちじゃないから、鬼婆の本当の恐さを知らない。



「数学、土屋先生なんでしょ?
どんな感じ?
超人気だよね、あの人。」

さりげない感じで、そう聞いてみた。
その答えがそれだった。



「ふーん…。
でもホント、あの人、ちょっとしたアイドルだよね。
あたしの友達もファンでさ、」

言いかけたところで、凜は明らかに嫌な顔をして、

「何?何かあったの?
別にいいじゃん、あいつのことなんか。」

そう言った。


凜は基本的に、あたしの前ではいつもニコニコと笑っている。


だからあたしは、彼女が本気で彼のことを嫌っているのを感じた。
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