君に許しのキスを
涙をこらえて、息苦しくなる。


「…妃奈ちゃん?」


凜が電話の向こうで、心配そうな声を出す。


凜に、心配かけちゃいけない。


そう思えば思うほど、息苦しい。


ふと背中に温もりを感じた。

途端に呼吸が、楽になる。




ああ、また、だ。


あたしって、なんて単純なんだろう。


振り向くと、彼の顔がある。

あたしは今、彼の腕の中にいる。

それだけで、大丈夫な気がしてくる。

ゆっくりと、深い呼吸をして、凜に語りかける。


「あのね、凜。」
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