君に許しのキスを
俺は彼女を誇りに思う。

自らの罪を正面から受け止めて、それを償い、前に進もうとしている。


きっとこんなに強い女は、他のどこにもいないだろう。

神の許しや救いなんか、必要ない。
彼女はこんなにも、強いのだから。



「先生、あたしは大丈夫だから。
頑張るから。」

彼女は俺の方に向き直り、涙を拭いながら言った。


『先生』、か。



俺は妃奈を抱き寄せる。

「先生?」

妃奈は戸惑った声で尋ねる。


「『先生』は止めてくれないか。
何か悪いことしている気分になる。
な?妃奈。」


触れた妃奈の顔が熱くなるのを感じた。


生徒を、初めて名前で呼んだ。
俺はとことん罪深いようだ。
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