君に許しのキスを
これは、神に背くことになるんだろうか。
神は、俺たちを許してくれないのだろうか。
とは言え、元々俺に信仰心なんてないのだが。



俺たちは、禁断の果実をかじったアダムとイブではない、はずだ。
つうか、禁断の果実って何だ。

それなら何故、神は“禁断”なんて作ったんだ。

たとえ俺たちがそれをかじったとして、そしてそれが罪だとして、その罪にどんな罰が与えられようとも、地獄に堕とされようとも、構わない。


この子を愛することが罪なら、どんな罰でも喜んで受ける。
地獄でもどこでも行ってやる。

一人で、堕ちてみせるさ。
きっとそこにはあいつもいるだろうから。

そうだろう?
地獄に、お前もいるだろ?
そこでお前に償いながら、俺一人で、罰を受けるよ。


我ながら完璧じゃないか。
そう思うとつい笑いが漏れてしまった。



「あの、せ…
えと、…しゅ…う…?」

その笑いに、妃奈が驚いたような、戸惑ったような声で問い掛ける。

俺の名前で。

くすぐったくて、抱きしめる腕にさらに力を込めた。


この少女に、地獄なんて似合わない。
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