君に許しのキスを
「キスしたり、抱きしめたり、守ってやりたいなんて言ったりしたけど、
本当に伝えるべきことを、まだきちんと伝えてなかった。」

繋いだ手に力がこめられているのを、強く感じる。

「俺は妃奈のことが好きだよ。
教師とか生徒とか関係なく。
それが、俺の本当の気持ち。
だけど実際はそうも言ってらんないけどな。
妃奈が不満に感じることも、あると思うし、世間的には許されないことだ。
それでも良ければ、俺と、付き合ってほしい。
罰は、俺が全部引き受けるから。」


周は真摯な瞳であたしをしっかりと見つめている。
だけど口元は、余裕を見せたいのか、緩やかに上げて結んでいる。
あたしは繋がれた手を強く握り返して、大きく首を縦に振った。


「じゃあ、今から恋人同士のデート、するか。」

周はそう言って目元から笑って見せた。
それはいつか見たような、冷たい笑顔とは違って見えた。

そして周は席を立ち、あたしの手を引いて歩きだした。

イルカショーの会場へ。



あたしたちは、イルカショーの間、携帯が鳴っていることにまったく気付かなかった。
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