君に許しのキスを
「だって妃奈ちゃん、
楽しそうに振る舞ってはいたけど、
どこか寂しそうだったから。」

あたしは彼から目をそらし、
さっきまでの話題の中心であるタコを探した。


「タコと沓宮さんってさ、似てない?」

彼はまた、水槽の中のタコに、視線を戻したようだった。

「ついさっき、気持ち悪いって言ってましたけど。」

あたしは彼と同じタコを見ながら言った。
すると、彼は可笑しそうに吹き出して言った。


「ああ、確かに。」

あたしは少し腹がたって、彼の後ろ姿を睨んだ。

「いや、違くてさ、
タコって、敵に墨吐くだろ?
初めて会ったとき、
周に飲み物かけた沓宮さんの姿と被るって言うか。」
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