君に許しのキスを
― 調子に乗っているから、天罰がくだった。



あの時はまだ、事の重大性を、
はっきりとは理解していなかったのだと思う。

かといって、そんなことを思うなんて、
あたしはどうかしていた。

しかも、憧れの先輩がそんな彼女を「健気だ」と讃えていたからといって、
それにも嫉妬を抱くなんて。



ある日、いつもの様に保健室にプリントを渡しに行くと、
唐突に凜が言った。


「いつもありがとう、妃奈ちゃん。
あたし、なるべく早く、教室に戻れるように頑張るから。」


いつもならもっと、空元気の笑顔なのに、
その日に限って、何故か凜はしおらしく、弱々しく微笑んで、
あたしの手に軽く触れながらそう言った。


あたしはそれに妙に腹がたち、つい、言ってしまった。


「触らないでよ、汚らしい。
教室になんか戻って来なくて良いから。
あたし、あんたのこと、ずっと嫌いだったの。」
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