君に許しのキスを
気付けば、妃奈ちゃんとばかり一緒にいた。

それくらい、あたしは彼女が好きだった。

昔の“あゆちゃん”の身代わりにするように。



そんなある日。
妃奈ちゃんが風邪で学校を休んだ日。

いつもなら妃奈ちゃんと一緒の帰り道を、あたし一人で歩いていた。



妃奈ちゃんとおしゃべりしていない以外、いつも通りに歩いていると、いきなり物陰に押し込まれた。

怖かった。

最初こそ、助けを呼ぼうとしたけれど、その男は、それも許さなかった。


男はどこからか、暗がりでのわずかな光をキラリと強く反射させる金属を手に取った。

それがナイフだとわかるまで、あたしは数秒かかった。


口元を手でふさがれ、目の前にはナイフ。
それだけであたしは、声の出し方がわからなくなった。
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