君に許しのキスを
俗に言う一流大学の医学部を、やはり当然のように首席で卒業した奴は、その大学の付属病院で研修医として勤めはじめた。

そこでも奴の優秀さは周りから一目置かれるものだった。


そんな奴を突然襲ったのは、信頼する人物からの裏切りだった。


その発端は、ほんの小さなミスだったらしい。
本当に小さく、些細な、医療ミス。


それはすぐに気付かれ、対処されたために、ほとんど表立った問題にはならなかった。


ただ本当の問題はその後だった。

ミスに気付いたのは、奴。
そして、ミスを犯したのは、奴が最も信頼を置き、尊敬していた、奴の指導教授だった。
実際には。



しかしそのミスは、奴が犯し、教授が発見し、対処した、と報告された。
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