君に許しのキスを
もちろん、彼に言ったことは、本心だ。


彼のお兄さんのことと、あたしのこととは無関係だし、
ましてそれは、彼自身の問題ではない。


それにあたしは、あの事件のことをはっきりと覚えている訳ではない。

水族館の時のように、フラッシュバックすることはあったけれど、
思い出せるのはそれと、ただ怖かったことだけ。


それと彼のお兄さんの件を結び付けるには、あまりに安直すぎる。


あたしはそんなこと以上に、彼のことが好きなのだから。

今回のことで、改めて感じた。

あたしは彼が好き。


そのことに、お兄さんも、過去も関係ない。


そう思う。
本当に。


それなのに心の奥底で、もうひとりのあたしが叫んでいる。


もう彼とはいられない、と。
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