君に許しのキスを

―side洋平

周から連絡が来たのは、あれから3週間ほど過ぎた頃だった。

『妃奈が渡したいものがあるって言っている。
会えないか。』と。

嫌な予感がした。
と言うより、嫌な予感しか、しなかった。


あの日、俺が目覚めると、凜は隣で俺の顔を見つめていた。
悲しそうな、あるいは照れたような瞳で、微笑みながら。

俺はそんな凜を抱きしめた。
愛しくて。
そして、何とも表現しがたい悲しみで。

抱きしめたまま、凜に聞いた。
「痛くない?辛くない?
大丈夫か?」


凜の顔を見ると、微笑んでいた。
「大丈夫だよ。」
俺の瞳をまっすぐに見つめ、はっきりとした声で答えた。


凜は本当に、苦しくないのだろうか。
辛くはないのだろうか。


こんな小さな身体が、もっと幼い頃、誰かによって、無理矢理汚された。
それを思うだけで、俺はそいつを殺してやりたくなるのに。

そしてそんな俺も、誰かから“殺してやりたい”と思われているかもしれない男と、同じ血が流れているのに。
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