君に許しのキスを
小さく震えた声だった。
けれど確かに俺の耳の奥に響いた。


「…何で、そう思うんだよ?」

俺は聞いた。
純粋にその言葉の意味がわからなかったから。


「手紙を読んでみて下さい。
少なくともあたしへの手紙には、そんな恨み言、一言も無かったから。」


テーブルに置いた、丸っこい字で俺の名前が書かれた封筒と、綺麗に二つ折にされた便箋に目をやった。


「倉嶋さんへの手紙を見たわけじゃないから、もしかしたら、あたしが思うのとは、違うことが書いてあるかもしれない。
だけど。」
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