君に許しのキスを
だけど、君からの手紙を読んで、兄貴に会わなければいけないと思った。
そうしなければ、前には進めないと。

だから会いに行った。
兄貴のところに。


あの事件前に顔を合わせて以来の兄貴は、少し痩せていた。
だけど俺が憧れていた兄貴の面影は残したままだった。

だけど、君との話をしたら、兄貴、泣いたんだ。
これまで一度も俺の前で泣いたことがない兄貴が。



子供の頃、自転車乗ってたら転んで、それをかばった兄貴の方が骨折したことがあったんだ。

その時も、兄貴は痛いはずなのに、泣いている俺に、怖かったな、もう大丈夫だ、痛い所はないか、
そう笑って聞いてきた。


そんな強い兄貴が、泣いたんだ。

悪かった、俺のせいだ、
そう言って泣きじゃくってた。
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