君に許しのキスを
「良いよ、もう。麻衣美のせいじゃない。
俺が、全部悪いんだから。」

俺は麻衣美に、コップに注いだペットボトルの紅茶を出しながら言った。
ほんのりと茶色く染められた麻衣美の長い髪が、力なく垂れている。
そこから香る、あのころとは違う甘い匂いが、俺の鼻をつく。

麻衣美は決して俺を見ずに、
「洋平は悪くない。
悪いのは、…洋平じゃなくて…」
と言うと、はっとしたように俺を見た。
そしてすぐに下を向いた。

それ以上、言葉が浮かばなかったようだ。


「…わかってる。
良いよ、別に。」

「……ごめん……」

それだけ言うと、麻衣美は口をつぐんだ。


麻衣美から「距離をおきたい」、そう言われて1年。

それからまったく逢うこともなく、先週、街で偶然麻衣美が男と歩いているところを見かけて以来の再会だった。
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