君に許しのキスを
…思い出せない。
だが確かに、二人の内の一人に見覚えがある。
俺は彼女を知っている。


…うちの生徒か?

ま私服だし、わかるわけもない。
そもそも生徒の顔なんか、いちいち覚えていない。

それより、若い女がこんな遅い時間に出歩いて…。


向こうが気付いたら捕まえないとやばいか。一応、立場上。面倒だな。


そう思い、気づかれないよう、顔を伏せながらラーメンをすすり始めた。


しかし、彼女達が通された席が俺の近くだったようで、すぐそばを通っていった女が、
「…あ…」
と小さな声を出した。
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