君に許しのキスを
今週はそんなことが起きてしまった。
起こるはずがないのに、起こってしまったのだ。


とにかく大変だったんだ。今週は。


それに加えて、今から気合を入れて会わなければいけない相手、洋平に会う。
思わずため息がこぼれてしまいそうだ。

…いや、違った。
洋平に関しては、俺が兄代わりになると決めたのだから、別問題だ。


一番の問題は、彼女にある。


真面目で無害そうに見えて、最も害のある女だった、彼女に。


思い出すと苛立ってくる。

苛立ちのままに、鞄に手を入れた。
それの中で手に当たった文庫本を取り出すと、それを開き、本の内容に集中する。
この苛立ちを少しでも紛らわせるために。




―『過ちを犯した。』

そんなその本の中の一説で、再び彼女のあの驚いた表情が脳裏をよぎった。
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