君に許しのキスを
その時の彼女を思い起こすと、不思議な気持ちに襲われた。

彼女に対する苛立ちが増していくような、逆にそれが和んで温かく解けていくような、不思議な感覚だった。



彼女と深く関わる気は毛頭なかった。

彼女は生徒であるから、その距離を壊した関係性は俺と彼女には、ありえなかった。


俺の人生を否定されても、彼女がその距離を超えようとしても、俺はそれに、苛立ってはいけなかったのかもしれない。
何の感情も抱いてはいけなかったのだ。



彼女は、俺のことが好きだという。

そして俺は、彼女とキスをした。



『過ち』、か。
俺はまた、過ちを犯したのか?
< 72 / 301 >

この作品をシェア

pagetop