君に許しのキスを
反射的にそう答えていた。

次の瞬間、あたしは自分の口にした言葉の意味を理解出来なくて、動揺した。


あいつも驚いたような表情をしていた。
けれど、それは一瞬だった。

というよりも、あたしがその一瞬以上、あいつの顔を見ることが出来なかったから。


その表情を確認した後、あたしは視線の先を慌しく動かせるしか出来なかった。


目のやり場に困ったまま、

「違う。」

本当はそう言いたかった。だけど、

「あ、えっと…
…ち…
…ちが…」

気が動転してしまったせいで上手く言えない。
言葉に詰まっていると、手をグイッ、と強い力で引かれた。
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