君に許しのキスを
―side洋平
「次は--。次は--。」
車内アナウンスが遠くで、俺のイヤホンの向こうから聞こえる。
俺はいつも、街中を歩くとき、ガンガンと音のうるさいロックを聞く。
好きなわけではない。
もっとも、俺に好きなものがあるのかすらわからないが。
いつからだろう。
耳をふさぐための、単なるアイテムだ。
今もこうして、家路を急ぐ人々の楽しそうに話す声も聞かずにすむ。
改札を出て、周の姿を探す。
大勢の人が行き交う、この駅で。
それでも俺の世界は、とても静かだ。
誰も俺を見る奴はいない。
俺もただ、周を探せばいいだけだ。
周は、改札から少し離れたカフェの近くの柱にもたれかかり、ぼんやりと、文庫本に目を落としていた。
俺はゆっくりと歩み寄り、声をかけた。
イヤホンは耳につけたまま。
周が口を開き、何か言う。
その声も俺の耳には届かない。
車内アナウンスが遠くで、俺のイヤホンの向こうから聞こえる。
俺はいつも、街中を歩くとき、ガンガンと音のうるさいロックを聞く。
好きなわけではない。
もっとも、俺に好きなものがあるのかすらわからないが。
いつからだろう。
耳をふさぐための、単なるアイテムだ。
今もこうして、家路を急ぐ人々の楽しそうに話す声も聞かずにすむ。
改札を出て、周の姿を探す。
大勢の人が行き交う、この駅で。
それでも俺の世界は、とても静かだ。
誰も俺を見る奴はいない。
俺もただ、周を探せばいいだけだ。
周は、改札から少し離れたカフェの近くの柱にもたれかかり、ぼんやりと、文庫本に目を落としていた。
俺はゆっくりと歩み寄り、声をかけた。
イヤホンは耳につけたまま。
周が口を開き、何か言う。
その声も俺の耳には届かない。