君に許しのキスを
「早いな。」

周の第一声はそれだった。


「お前、遅刻魔だったろ。」


俺はそれを聞いて、ふっ、と軽く吹きながら答えた。

「イヤ、それ周が大学んころの話っしょ。
成長しましたから。」

「そうか。」

周もふっ、と微笑み、俺から目をそらした。



ああ、周らしいな、と感じた。
人に対して気を遣って、自分から歩み寄って、優しく近づくくせに、自分から目をそらす。


それが彼の優しさなのだと、大抵の人は気付かない。



俺にも、未だによくわからない。

彼の本心がどこにあるのか。


ただ彼がいることで、俺は救われたのかもしれない。


救われている人もいるのかもしれない。



しかし俺は、逆に閉じ込められているのかもしれない。


あのときの苦しみに。
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