君に許しのキスを
「凜は…ただちょっと男の人が苦手で…。
それに…あ…あたしも…いけなくて…。
それで…あんなこと…
ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした…っ」


彼女は言葉を詰まらせながらも、必死に涙を堪え、俺と男性教師を交互に見ながら、そう彼女の友人の非を詫びた。

交互に、と言っても、彼女はほとんど男性教師にすがるように、頼るようにしがみつき、見つめていた。


それを受けた男性教師は、彼女を慈しむように優しく抱きしめた。


俺はただそれを見ながら、ベッドに横たわる女子高生の名を思った。
さっきの話で初めて知ったその名前。

『凜』


居酒屋で、教師に飲み物をぶっかけたときの、キリリとしたその瞳にぴったりだと、この状況下で不謹慎なほど暢気に、そう思った。
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