君に許しのキスを
― だいじょうぶか。



彼は心配そうに目尻を少し下げながらそう囁いて、あたしの顔を覗き込む。

あたしの心を溶かしてくれる、男の人。



その胸に飛び込むと、ようやく空気があたしの身体の中を、スムーズに流れていった。


そして窓の外は、既に夜が明けていることに気づいた。


― さっきのも、夢。 ―



細く息を吐いて、窓の外を眺めた。


その様子に気づき、男の人はあたしの身体を少し離し、顔を上げさせた。



「村西、大丈夫か。」

さっきと同じことをまた聞いた。


あたしはその顔を見て、ただ思ったことを口にした。


「せんせえ、すき。」
< 98 / 301 >

この作品をシェア

pagetop