ヤクザと執事と私 1
そうこうしている内に気を失っていた男が目を覚ました。
「・・・うっ・・・いて・・・・」
男は起き上がってしばらくは、ボーっとしていたが、すぐに状況が飲み込めたようだった。
「・・・・ま、待ってくれよ・・・何でもしゃべるから、頼むから殺さないでくれよ」
私は、男が何で急にこんなことを言い出したのか不思議だったけど、後ろを振り返って理由がわかった。
サブが男に拳銃を構えていた。
といっても、サブは撃つ気などさらさらなく、拳銃で遊んでいただけだけど。
ただ、この時、私は、チャンスだと思った。
「それじゃ、何で俺達を攫ったのかを教えてもらおうか?」
私は、できる限りのドスの聞いた声で男に話しかける。
「・・・別にあんたらじゃなくても、よかったんだ。あの執事を呼び出すために、誰か笹山組の組員を誘拐する必要があったんだよ。」
男が、拳銃の銃口を見つめながら、早口で話す。
「なんで執事さんを呼び出すんだよ。」
サブが拳銃を構えたまま、男に聞く。
「・・・この間、あの執事にこっちの仕事を邪魔されたからだよ。・・・しょうがねーだろ。仕事を邪魔されて黙っていたら、ヤクザとして生きていけないんだよ。お前もヤクザの端くれならわかるだろうが。」
男が言葉を吐き捨てる。
・・・やっぱり原因は私。
ただ、この時点で、攫ったヤクザが私の事に気がついてないこともわかった。