ヤクザと執事と私 1
第5節:嵐の後
20分くらい殴り合っていただろうか。
私は、疲れて床に座り込んでいる執事と組長に水を運ぶ。
「サンキュー。」「ありがとうございます。」
組長と執事がそれぞれ私に言葉をかけて水の入ったコップを受け取った。
「それにしても、本気で組長を殴る奴がいるかよ。」
組長が口の中が切れているのか、水をしかめっ面で飲みながら、執事の方を向く。
「これは暴力ではなく、愛のムチです。教育には時には痛みが伴うものなのですよ。」
執事の顔にもアザが出来ていたが、一切、痛そうなそぶりを見せずに、執事が答えた。
私は、このケンカの後の2人の関係が心配だったけど、どうやら杞憂に終わりそう。
ポチも目を覚まして、殴られた傷の手当てをしている。
真木ヒナタは、どこから持ってきたのか、アイスを口にくわえて、美味しそうに食べていた。