ヤクザと執事と私 1

「とりあえず、逃げて正解だったよ。そのまま家にいたら、ヤクザに攫われていたと思うよ。」


ハルさんは私の目をジッと見つめている。


「ただ・・・死ぬのはいただけないね。」


ハルさんは、私の独り言を聞いていたのだ。


ブランコに座り、思わず飛び出た言葉を。



「・・・うん。わかってる。」


私は、小さく返事をした。



「どうせ、人間いつかは死ぬのだから、それまではアホみたいに足掻いてやればいいのさ。このあたしみたいにね。」


ハルさんは、口を大きく開き、大笑いをする。



私は、なぜかそのハルさんの笑いを見て、少し救われたような気がしていた。




その夜は、ハルさんの所に泊めてくれた。


ブルーシート1枚しかなく、公園の音がそのまま聞こえてきて落ち着かなかったけど、ハルさんが隣にいてくれたおかげで少しは眠ることができた。


< 17 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop