ヤクザと執事と私 1
「・・・大変だったんだな。」
「はい。本当にやくざって大変なんだなって思いました。」
「・・・というか、小夜って、やくざじゃないよね・・・でも、本職の俺でも1日でこんな経験したことは無いけど・・・」
サブが少しうらやましそうな表情で私を見る。
「・・・俺のせいですかね?」
「・・・そうかもしれないよ。俺なんか小夜がもの凄い大物に見えてきた。」
「そんなことあるわけないですよ。」
サブが私に鼻を近づけ、匂うしぐさをする。
「サブさん、どうかしましたか?」
「小夜・・・少し匂うな・・・風呂入ってるか?」
「・・・いえ・・・あんまり・・・」
私は、恥ずかしくて顔が真っ赤に染まる。
確かにまともにお風呂に入っていない。
ホームレスの私には・・・お風呂は簡単に入れるものではない。
ただ、男のフリをしてても、こんなことを他人にいうのは、女の私には恥ずかしい。
「・・・そっか・・・小夜は、ハル婆と暮らしてんだったな・・・」
「はい。」
サブは、何か思いついたようにポケットを探り、鍵を一本取り出し、私に差し出す。