ヤクザと執事と私 1
「・・・何ですか、この鍵は?」
「俺のアパートの鍵。ほら、この屋敷の目の前にアパートがあるだろ。俺、そこにひとり暮らししてんだよ。といっても、ほとんどこの屋敷にいるから、帰ってないんだけどな。そこの風呂でよかったら使えよ。」
「いいんですか?」
「ああ、その鍵、合鍵だからいつでも好きな時に風呂に入りに行っていいぞ。・・・っていうか、いくら嫌いでも、風呂は毎日入ったほうがいいぞ。そんな匂いさせてたら女にももてないし。」
(・・・私がその女なんですけど・・・ )とは、口がさけてもいえないので、ありがたくサブの好意に甘えて、鍵を受け取る。
(それにしても・・・私、どんな匂いがしていたんだろう・・・)
考えれば考えるほど悲しくなってくる。
「それじゃ、前のアパートの101号室だからな。気をつけて帰れよ。」
「ありがとうございます。サブさん。」
私は、サブに一礼して、門を出る。
そして、門の前のアパートの101号室に入る。
そこは、驚くほど何もない部屋だった。
狭い部屋には、ベットがひとつあるだけ。
他には何もない。
私は、タオルを持っていないことに気づいたが、ここまで来てお風呂に入らないなんて耐えられなかった。
サブに悪いと思いながら、部屋の押入れを開けると、幸運にもバスタオルが一枚あった。
私は、心の中でサブに謝りながら、バスタオルを1枚借りる。