ヤクザと執事と私 1

ふと、ここで気づく。


(なんで、私、謝ってんだろ?)


どうにも、真木ヒナタが絡むと、すべて真木ヒナタのペースで話が進んでしまう。


10分ほどかかって、どうにか顔の落書きが落ちた。


水性マジックだったらしい。


真木ヒナタの最低限の気遣いに安心した。


これが、油性マジックだったら、こんなものでは落ちなかっただろう。


「おっ、落ちたか。小夜。」


サブが私がマジックを落としていたお風呂場を覗く。


「はい。どうにか落ちました。」


私は、お風呂場においてあったタオルで顔を拭いた。


「よかったな。真木さん、最初、油性マジックで落書きしようとしていたから、必死に俺が止めたんだぞ。感謝しろよ。」


「・・・サブさんが?」


「ああ、あの人、悪戯に関しては、容赦しないからな。」


私は、少しでも真木ヒナタに感謝した自分を恥じた。


(真木さんにそんな気遣いあるはずがないことは、昨日の一日でわかってたはずなのに・・・)

< 209 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop