ヤクザと執事と私 1
ふと、ここで気づく。
(なんで、私、謝ってんだろ?)
どうにも、真木ヒナタが絡むと、すべて真木ヒナタのペースで話が進んでしまう。
10分ほどかかって、どうにか顔の落書きが落ちた。
水性マジックだったらしい。
真木ヒナタの最低限の気遣いに安心した。
これが、油性マジックだったら、こんなものでは落ちなかっただろう。
「おっ、落ちたか。小夜。」
サブが私がマジックを落としていたお風呂場を覗く。
「はい。どうにか落ちました。」
私は、お風呂場においてあったタオルで顔を拭いた。
「よかったな。真木さん、最初、油性マジックで落書きしようとしていたから、必死に俺が止めたんだぞ。感謝しろよ。」
「・・・サブさんが?」
「ああ、あの人、悪戯に関しては、容赦しないからな。」
私は、少しでも真木ヒナタに感謝した自分を恥じた。
(真木さんにそんな気遣いあるはずがないことは、昨日の一日でわかってたはずなのに・・・)