ヤクザと執事と私 1
「これもお食べ。」
先ほど豚汁を運んできてくれた老人が菓子パンを3つ私にくれた。
私は、その老人を見つめる。
「いいんですか?」
そのパンがその老人にとって大切な食料だということは、私にもわかる。
老人にとっての菓子パンは、普通に暮らしている人とは、その価値が石ころとダイヤモンドほど違うかもしれない。
それを私にくれるというのだ。
さすがに私は受け取れなかった。
「いいよ。また賞味期限切れもらってくるから。」
老人が優しく笑う。
「小夜、貰っておやり。ジジイは若い子を話せるだけでうれしいんだから。」
ハルさんがそういってくれたので、私は、「それじゃ、1つだけ。」と、1つだけパンを貰って食べた。
今まで食べた菓子パンの中で一番おいしく感じた菓子パンだった。
その菓子パンをくれたおじいさんはみんなから、「シゲ爺」と呼ばれていた。
もう見た目だけでも、かなりの老人で、髪やひげは真っ白だ。