ヤクザと執事と私 1
「・・・どうかされたんですか?」
私は、組長の不機嫌さが気になり、隣の執事に聞いた。
「・・・いや、小夜さんのことではありませんよ。真木ヒナタさんが・・・組長の顔に油性マジックで落書きしたんですよ・・・今朝。」
執事は、これ以上ないくらい深いため息をつきながら、答えてくれた。
(・・・私に油性マジックで落書きできなかったから・・・組長にしたんだ・・・あの人・・・)
私は、心底、真木ヒナタの自由奔放さにあきれた。
「組長の機嫌がこれ以上悪くなる前に行きましょう。」
執事に言われ、私は、執事と一緒に止まっている車の一台に乗り込んだ。
その車の中には、すでに運転席にポチ、助手席にサブがいた。
「小夜兄さん、スーツ姿もお似合いですよ。」
ポチも昨日とは違いスーツ姿だった。
「・・・どうして、今日は皆さん、スーツ姿なんですか?」
私は、隣の執事に聞いた。
「ちょっと、今日は大事な取引があるからですよ。」
執事が、にこやかに答えてくれた。
が、その執事の言葉を聞いて、前のポチとサブが軽くため息をつくのが見えた。
しかし、執事が、にこやかにしている以上、2人になぜ、ため息をつくのか聞くことは出来なかった。
「それじゃ、いきましょうか。」
執事の言葉で、車は動き出した。