ヤクザと執事と私 1
室内は、昨日見たよりは、かなりキレイに片付けられていた。
組長と真木ヒナタがソファーに腰を下ろし、そのソファーの前に真壁純が死刑を待つ囚人の様な顔で立つ。
私と執事は、奥の台所に行って、人数分のコーヒーを用意して運ぶ。
「失礼致します。」
私は、一声かけてから、組長と真木ヒナタの前にコーヒーを置いた。
「なんだよ、これは!」
私がおいた飲み物をみて、真木ヒナタが立ち上がる。
「え、・・・コーヒーですけど?」
なぜ真木ヒナタがそんなに怒っているのかわからないまま、私が答えた。
「俺はコーヒー牛乳しか飲まないって言っただろ!」
「・・・いつですか?」
「昨日の夢の中でだよ!」
「・・・」
私は、台所に戻り、冷蔵庫の中から牛乳を取り出すとその牛乳パックごと持って、真木ヒナタの前のコーヒーに牛乳を注ぐ。
「・・・どうぞ、コーヒー牛乳です。」
「・・・う~ん、これだよ、これ。」
真木ヒナタは、今にも溢れそうなカップに口を近づけて、おいしそうに飲み始めた。
(・・・こうしてみると、真木さんって本当に子供なんだけどね・・・)
そんな真木ヒナタの様子を見ていた組長がうらやましそうな表情になる。
「だめですよ、組長。」
そんな組長の様子を見て、執事がすぐに組長に一声かけた。
「・・・なんで?」
組長は、顔だけ執事の方へ向け、尋ねる。
「・・・どこのヤクザの組長が、コーヒー牛乳なんか飲むんですか。」
あきれた様子の執事が組長をたしなめる。
「ここ。」
即答する組長。