ヤクザと執事と私 1
しかし、2人は、入り口を見つめたまま、顔を動かそうとしなかった。
私は2人の真剣な表情に体を動かすことも忘れて、そのまま石のように固まったままでいる。
その時、Barの入り口のドアが開き、一人の男が入ってきた。
入ってきたのは、車で待っていたはずのポチだった。
ポチの顔は血だらけで、顔に小さいガラスの破片が刺さっていた。
ポチは、入ってくるなり、「ま、前に止めてあった車が爆破されました・・・」というと、そのまま意識を失い倒れる。
真木ヒナタは、その言葉を聞いてすぐに、私の側を離れ、ポチの方へ走る。
私は、てっきり真木ヒナタがポチの所へ行ったのかと思ったけど、真木ヒナタはそのままポチの横を通り過ぎてドアから外に出て行った。
「サブさん、ポチさんをこちらに背負ってきてください。」
執事が私を抱きかかえたまま、サブに言う。
「わ、わかりました。」
爆破の揺れで倒れていたサブは、執事に言われるとすぐに立ち上がり、倒れているポチの側に行って、ポチを抱えて執事の側に来た。
「小夜さん、大丈夫でしたか?」
執事がそこで初めて私を見つめた。
「はい。」
「そうですか。それでは、ポチさんの様子を見ますので、起こしますよ。」
執事は、私に笑顔を向けたまま、私をゆっくりと起き上がらせた。
私は、少し名残惜しいと思いながらも状況が状況だけに、素直に執事の腕から立ち上がった。