ヤクザと執事と私 1
「・・・いいのか?」
悩んだすえにサブが真壁純に聞く。
「いいですよ。ここからタクシーで行けば、病院の方向が爆発場所と逆だから、爆発の混乱も避けられると思いますし。」
「・・・頼むよ。」
サブは、真壁純の手を握り、頭を下げる。
そんなサブの行動に少し照れた様子の真壁純が、「カリを返すだけですよ。それじゃ、タクシー拾ってきますから。」と言い残して店を出て行った。
真壁純が、出て行った後すぐに、ママが紅茶を入れて戻ってきた。
「あれ?ひとり帰っちゃったの?」
相変わらずのゆったりとした口調。
「あ、はい。この人病院に連れて行くために、タクシー拾いにいったんです。」
私がママに説明する。
「そう。それじゃ、仕方ないわね。」
ママは、残念そうに言って、紅茶をテーブルの上において、「お茶にしましょ。」と明るく私とサブに笑いかけた。
「あ、はい。」
私とサブは、ポチのことは心配だったけど、ママの独特な雰囲気に押され、言われるとおりにテーブルにつく。
「あ、おいしい。」
ママの入れてくれた紅茶は、今まで私が飲んでいた紅茶が別の物と思えるほど美味だった。
「そう、うれしいわ。」
ママが本当にうれしそうに笑う。