ヤクザと執事と私 1
「ただいま。」
真木ヒナタは、マンホールを降りていく。
マンホールの中には、10人程度の少年や少女がいた。
彼らは、みんな真木ヒナタと同じように両親に捨てられた少年少女だった。
「ヒナタ兄ちゃん、どうだった?」
年下の少年が真木ヒナタに寄って来る。
「ああ、大漁だよ。」
そういって真木ヒナタは、持っていた缶詰を少年に渡す。
「わあ、すごーい。ヒナタ兄ちゃん。」
「みんなで分けるんだぞ。」
缶詰をもって喜ぶ少年に声をかけておいて、真木ヒナタは、マンホールの中のさらに奥へと歩いていく。
そして、真木ヒナタが歩いて到着した先には、数人の少年少女が苦しそうな息遣いで寝ていた。
そんな少年少女を看病している少女に声をかける。
「どんな感じだ?」
「・・・うん・・・。」
聞かれた少女は、「うん。」としか話さなかったが、表情を見れば状態の悪さは見て取れた。
彼らは、当然、病院なんかいけるわけがない。
極寒の寒さと栄養不足で死んでしまう子供も珍しいことではなかった。
珍しくないからといって、その悲しみになれることはない。
ただ、胸の奥にその悲しみを刻みつけておくことしかできなかった。
「これ、食べさせてやれよ、レナ。」
真木ヒナタは、盗んだ缶詰を看病していた少女レナに渡す。